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Place: New York

ウディ・アレン監督『ミッドナイト・イン・パリ』

Woody Allen
アートカテゴリ:  Film

新たに米国にて公開を迎えるウディ・アレン長編映画監督41作目『ミッドナイト・イン・パリ(原題:Midnight in Paris)』は、前作『You Will Meet A Tall Dark Stranger』に引き続きパリの街が舞台。鬱陶しい雨でさえも、そこでは濡れても構わないと思えてしまうくらい特別で、街をパリらしく演出するための、なくてはならない要素になる。花の都では、どうやら雨に濡れることも“おつ”だと思わせる、魔法のようなものがあるようだ。

ある雨の日のニューヨークで、アレン氏が本作のため先日記者会見を行なった。

「パリで何を撮ったら良いか分からなかったけど、ロマンチックな作品になるだろうと思ったよ」とアレン氏が語ったように、物語よりも先に『ミッドナイト・イン・パリ』というタイトルがまず決められた本作。オープニングシーンでは、コール・ポーターの「レッツ・ドゥ・イット(レッツ・フォール・イン・ラブ)」に乗せて、2003年の『僕のニューヨークライフ』でもアレン氏と共に仕事をした撮影監督のダリウス・コンジが、パリの観光名所の昼と夜、そして雨に濡れた街の顔までも見せてゆく、まるで1979年の『マンハッタン』のように。アレン氏は、誰もが抱くパリのイメージで物語の幕を開けることで、人々の中のパリを呼び起こす。

主人公は、オーウェン・ウィルソン扮する、ハリウッドの映画脚本家のギル・ペンダー。フィッツジェラルドやヘミングウェイを敬愛し、小説家を目指す彼は、婚約者イネズ(レイチェル・マクアダムズ)と彼女の共和党を指示する両親(ミミ・ケネディ&カート・フ
ーラー)とパリに来ている、すでに彼の冒険が始まっているとも知らず。イネズが観光
地や買い物を楽しむのをよそに、若い頃にいたその街の持つユニークさや美しさを肌で
感じたいギルは1人で街を散歩する。そしてある晩、彼が1人で外に出掛けたとき、パリの魔法の扉が開かれる…

気が付くと観ている方も魔法にかけられているような気分にさせられる本作。ウィルソンやマクアダムズのほか、キャシー・ベイツ、マイケル・シーン、マリオン・コティヤール、エイドリアン・ブロディ、カーラ・ブルーニといった、絶妙なキャストが織りなす94分間の魔法は、まるでパリの黄金時代であるベル・エポックの魂に賛美されているかのようにあまりにも美しく儚い。その魔法がずっと続いてくれれば…

才能あるがゆえに、ハリウッドの快適な暮らしの中で自分を見失ったギル。しかし、再
びパリに来たことが引金となり、小説家になりたいという情熱が再び蘇える。同時に、『カイロの紫のバラ』に似た雰囲気を持つように、本作はアレン氏自身の彼の過去への回帰でもあるようだ。物語が現実的でなければならないという概念から抜け出した1985年の彼の作品の持つ自由さが、本作を煌めかせ、また彼自身を飛躍させた。映画には、昔も今も“夢”がなくてはならないのだ。

過去6年間の作品は『人生万歳!』を除けば、全てヨーロッパで作品を撮っているアレン氏。海外での撮影経験を「海外のクルーもアメリカのクルーと同じだよ。皆プロ意識を持っているしね。海外で仕事ができるって素晴らしいことだと思うよ」と語る。今夏撮影の次回作は、またもニューヨークではなくローマで予定されている。またその作品では、ジェシー・アイゼンバーグ、

エレン・ペイジ、アレック・ボールドウィン、

ペネロペ・クルス、ロベルト・ベニーニといった個性豊かな俳優陣の中に交じって、自身も出演予定とのこと。そんな彼はイタリアでの次の撮影について、「野球が全く観れなくなるし、3ヶ月間ずっとホテルのシャワーを浴びなきゃならないよ」と、いつも通り茶目っ気たっぷりにジョークを飛ばしてみせた。

text by 岡本太陽