Film Freaks

 

ドキュメンタリーにだまされろ!

アートカテゴリ:  Film

ドキュメンタリー映画だと思って観ていたら、それが実は嘘だった ——

そんな(なーんちゃって的な)映画を「モキュメンタリー」といい、映画やテレビのジャンルのひとつとして存在する。


「モキュメンタリー」は、「偽の」などを意味する“mock”から転用した造語で、このジャンルは50年代ごろに出現した。「どこから流出してきたかわからない“いわくつき”の撮影素材を見てみましょう」というような映画から、プライベートビデオやワイドショーを装う映画など様々。前者は、ホラーなど怖いもの見たさを煽るジャンルが多く、『ブレア・ウィッチ・プロジェクト』『食人族』『ギニーピッグ』などが知られる。


一方で後者には、「なーんちゃって」という「オチ」を観客にバラす作品もある。本当の話と信じていた観客にとって、それは大きなショックとして覆い被さり、虚実入り乱れて、オチでさえ「本当だったのか?」と疑いたくなる。「どうして嘘をついていたのか?」、「なぜオチをばらすのか?」、「嘘のドキュメンタリーの真意は?!」など、観客の思いが交錯する。ストーリーとしての「嘘」ではなくて、オチをばらすことによって純粋な映画的な嘘をつくテクニックに観客は驚愕することになる。


そのモキュメンタリーのテクニックの例として、ロケーション(事実)からスタジオセット(虚実)への転換(スタジオ撮影風景なんて見せていいのか?!)や、プライベートビデオによる独白(主人公が「いままでの話は嘘です」って、言っていいのか?!)がある。また登場人物たちが実在している人物だと思っていたのが、「実はプロの役者ではないか?」、「脚本があったのでは?」など、困惑させる要素がたっぷりなのだ。(ネタバレになるからあまり大きな声では言えないけれど、「A Man V*nishes」(邦画)や「The Watermelon w*man」(米映画)といった傑作があるので探してみてね)


映画は「嘘」をつく。ストーリーを構築するために虚構が積み上げられていく。われわれ観客は虚構の集積の中に現実を見つけ出し、映画に魅了される。逆にモキュメンタリーは、真実を積み上げていったように見えて、実は虚構だった(かもしれない)という、信じていた映像や構成が崩されていく。たとえば『そして船は行く』や『スティング』などストーリーでだますのとは違う驚きを、モキュメンタリー映画は持っているのだ。


どうせ映画は嘘をつくんだから、映画を観るときはドキュメンタリーでさえだまされようじゃないか、とは思いませんか?

泉 知良 (Tomoyosi Izumi)

ニューヨークにて映画制作を学ぶ。現在、日本の映画制作会社にて勤務の傍ら、COOLで人気No.1のコラム「Film Freaks」を連載中。