Film Freaks

 

ニューヨークのインディペンデント映画作家はどこへ行った?

アートカテゴリ:  Film

まずは僕の個人的な映画体験から。僕は以前、友人や知人から「ジャームッシュやスパイク・リーが好きか?」と問われることがよくあった。面倒くさいときはたいてい「イエス」と答え、機嫌が良いときは「イエス、でもね…」と話を続けたものだった。数年前、僕がニューヨークで映画の勉強をしていたころの話だ。


80年代の映画を語る上で、ニューヨークのインディペンデント映画作家の存在を無視することはできない。前述の2人の監督以外にも、ジョン・セイルズやアベル・フェラーラが登場し、このころニューヨークのインディー作家のムーブメントが興りはじめた。90年代に出現する、彼らに続く作家たちにはジャームッシュの撮影監督をしていたトム・ディチロやハル・ハートリー、アラン・テイラー、リサ・クルーガーがいる。また俳優であり映画作家ともいえるヴィンセント・ギャロ(アベル・フェラーラやアラン・テイラー作品に出演)や、ソニック・ユースやリディア・ランチの映像を製作していたリチャード・カーンやニック・ゼッドまでも含めてしまうと、このころ登場したニューヨークの映画作家は相当数にのぼる。


突如80年ごろから90年半ばにかけて現れた映画作家たちの一群は、数々の傑作を製作し我々を魅了していった。それ以前は、「ニューヨークインディペンデント映画の父」と呼ばれたジョン・カサベテスやウディ・アレンの2人が、70年代に傑作を製作したに過ぎない。しかしこれ以降、こういった作家たちに次ぐような若手作家は、世紀を跨ぐ前からとうとう現れないままで現在に至っている。


このごろはインターネットやSNSの出現で、フィルムに頼らない低予算デジタル映画制作が可能になり、無名のインディペンデント・フィルムメーカーにとっては良い環境ができつつある。それにニューヨークはいまだ刺激的な街だし、そろそろ80年代のように誰か新しい映画作家が再び出て来てもいいんじゃないかと思ったりもする。それとも、本当のインディー作家なら、ブルックリンの倉庫でおこなわれているイベントなんかで密かに傑作を上映していたりするのだろうか。


個人的にも、近くニューヨークから再び良質のインディペンデント映画作家が登場することを待ち望んでいる。

泉 知良 (Tomoyosi Izumi)

ニューヨークにて映画制作を学ぶ。現在、日本の映画制作会社にて勤務の傍ら、COOLで人気No.1のコラム「Film Freaks」を連載中。