Film Freaks

 

映画を映画館で観る楽しみ

アートカテゴリ:  Film

みなさんは映画を映画館で観ることは好きですか?僕は断然好きです。大きく暗いハコの中の座席にゆったりと座って、僕とは無関係に規則正しく1秒に24コマ流れるフィルムに身を委ねることは、すごく気持ちのいいことだといつも感じてしまうんですよね。


映画館って映画をただ観るだけではなくて、不特定の人たちと観ることで映画の内容とは関係ないところで楽しかったりする。映写のピントが甘いと「フォーカス!」と観客が場内から映写技師に怒鳴ったり(ニューヨークにて)、上映中映写技師がフィルム巻を切り替えるのを忘れていて、数分間暗闇の中映写が再開するのをじっと待っていたり(大阪にて)※ 1


映写で一番すごかったのは、B級映画ばかりを3本立てで上映していた場末の映画館で観たときだ。フィルムをずたずたに編集されて上映していたので、自分の脳ミソの中で編集し直してストーリーを理解しなくちゃならなかった(ちなみにこのときも大阪だった)僕はそれについて何も文句を言わなかったけれど、他の観客も文句ひとつ言わなかったのがまたすごい。反対に、こういったことに怒るのもまた理解できる。金を払い、忙しい時間を裂いて観に行くわけだから。貴重なフィルムを観るときなどなおさら怒りたくなるだろう。だけどそれが貴重な映画体験として記憶に残る人たちもまたいるのだ。特にドライブインのシアターなどは、音響も含めて映写には決していい環境じゃないけれど、カップルでの映画鑑賞にはある意味で最高の環境だったりするわけだ。


『ニューシネマパラダイス』のアルフォードとサルバトーレじゃないけれど、観客は映画館という場で映写技師と暗黙のうちにコミュニケーションを図っている。過激派映画ファンなら怒りそうなことでも、僕みたいなユルい映画ファンなら逆に映写技師が巻き起こすハプニングまで楽んでしまう。それもまた映画館で映画を観る楽しみのひとつだと思っています。


映画館は映画や観客、映写技師やもぎりのおばちゃんなどそこに集う人たちみんながいて成立している。そういった「他人とのコミュニケーションという刺激」、「上映時間や期間の制約と拘束」という2つの避けられない要素によって映画館で観る楽しみがもたらされる。これらがフィルムへの集中と暗闇での開放感という均衡の中で映画館独特の高揚を与えてくれるのではないでしょうか。



※ 1: 比較的最近まで、プログラムを取り仕切るために、映画館の1つの映写室に1人の熟練した映写技師を必要としていた。その主な理由はフィーチャー映画(長編映画)がフィルムの標準リール1本以上の長さで上映されるために、同調させた2台の映写機を用いて上映中の中断を避けたからである。

泉 知良 (Tomoyosi Izumi)

ニューヨークにて映画制作を学ぶ。現在、日本の映画制作会社にて勤務の傍ら、COOLで人気No.1のコラム「Film Freaks」を連載中。