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Place: New York

トライベッカ映画祭2015

アートカテゴリ:  Film

今やニューヨーカーにも馴染みのある今年で第14回目を迎えたトライベッカ映画祭。過去数年のトライベッカ映画祭はチェルシーを拠点として開催されていたが、1ワールドトレードセンターの建設終了やローワーマンハッタンの大規模な回復に伴い、映画祭が原点であるトライベッカに戻ったことが大きな話題を呼んだ。

 

今年の映画祭では長編映画から101本、短編映画から60本がラインナップに並び、そのうち長編67本、短編40本がワールドプレミアを迎えた。

 

そして今年のワールド・ナラティブ・コンペティション部門ではアイスランド映画『ヴァージン・マウンテン(英題:Virgin Mountain)』が、ワールド・ドキュメンタリー・コンペティション部門ではジンバブエの憲法改正を追ったデンマーク映画『デモクラッツ(原題:Democrats)』が共に作品賞に選ばれた。

 

さらに観客が投票を行い人気の高かった作品に贈られる注目の観客賞は、ナラティブ部門のフェリックス・トーマス監督作『キングジャック(原題:King Jack)』、ドキュメンタリー部門ではパトリック・オブライアン監督作『トラスファッティライヴス(原題:TransFatty Lives)』が受賞し映画祭は幕を閉じた。

 

毎年豪華な映画人によるトークも本映画祭の大きな魅力の1つで、今年はジョージ・ルーカス、クリストファー・ノーラン、ベネット・ミラー、ケイリー・フクナガ、ガス・ヴァン・サントなど日本でも知名度の高い映画人がトークに名を連ね映画祭を盛り上げた。

 

また今回の映画祭ではスプリング・スタジオと呼ばれる新たに改装されたメインビルティングの披露が行われた。このスプリング・スタジオは革新とストリーテリングを理念として掲げており、今までにはない新しい試みがいくつも見られた。

 

スプリング・スタジオはトークイベントやクリエイターたちとの交流の場で、彼らの最新の映像技術を体験出来るインタラクティブ・プレイグランドが設置されていた。ヴァーチャルリアリティー体験は今回の醍醐味の1つで、実に10種類以上もある最新技術体験を提供していた。スマートフォンをゴーグルに変形させ、刑務所、ロックコンサート、グランドキャニオンといったものを、まるでそこにいるかのようにヴァーチャル体験できる技術などもあり人々の目を惹いた。

 

中でも特に印象深かったのは、ジョージ・ジマーマンに射殺された黒人高校生トレイボン・マーティンの最後の時間をヴァーチャルリアリティーで体験する“ワンダークナイト”だ。「この技術は映画だけではなく我々人類の進歩への助けになる」とクリエイターは言う。また「この技術により我々は未来の地球や我々自身のことをもっとより容易に想像し、そこで生じるである問題に対して事前に対処法を考えることができる」と続けた。

 

映画祭期間中には例年通りトライベッカ・ファミリーフェスティバルが開催され、トライベッカ近隣で主に子供たちを対象としたストリートフェアが催された。例えば路上の足長クラウンが子供たちを楽しませる光景や、ステージアトラクションでに参加した子供たちの笑顔がさわやかな印象を残した。

 

トライベッカ映画祭は、秋に開催されるニューヨーク映画祭ほど歴史は古くないため、年ごとに大きく姿勢を変えながら映画祭のあり方を模索してきた。それはある意味、常に変化の絶えないニューヨークを反映している映画祭と言っても過言ではないかもしれない。しかし元々は9/11による被害で大きな打撃を受けたダウンタウンの復興を目的としたのがトライベッカ映画祭。ダウンタウンが9/11以前よりなお発展を遂げた今、今後どのように映画祭を運営していくのかが人々の興味を向けさせる鍵となるだろう 。

 

 

text & photos by Ikuro Kambe(神戸 郁郎)