Interview

 
 
Place: New York

生と死のダンス

Toshiaki Toyoda
アートカテゴリ:  Film

多くの宗教は恐怖心を無くすような教えを説く。それと同様、豊田利晃監督作『I’M FLASH!』の主人公で、新興宗教団体“ライフイズビューティフル”の若き教祖ルイ(藤原竜也)も、「死を恐れて生きるな」と諭す。しかし、スキャンダラスな事件をきっかけに、起こされるのを待っていたかのように、ルイの中で生と死の意識が同時に目を覚まし、彼はその狭間でもがき苦しむ。

 

事件の後、マスコミの目を逃れるため南の孤島に逃げてきたルイ、そしてそこに到着し、ルイに興味を抱きつつも冷めた目で彼を見つめるボディガードの新野(松田龍平)。映画の中で2人の立場は対極に位置しているが、まるで生と死がダンスしているかのようにも描かれている。また興味深いのは、この映画を観るに当たり、3つの次元で生と死のドラマが生み出されること。豊田氏は、ルイの心、ルイと新野、そして映画を観る我々の心の内で起こる生と死の葛藤を『I’M FLASH!』で一度に炙り出す。

 

死を恐れることはごく自然。また、死を恐れない意識を持つことで解放されることもあるだろう。豊田氏は、この世に生まれ落ちてしまった以上避けては通れない、人間の問いを本作に込めている。凄まじいドラム音、バイオレンスそして独特のシュールな笑いの中で、我々は生と死の間で揺れる。そうやって悩むことは自然で正直であると語りかけるかのように、どこか我々の意識や存在を肯定するような癒しの要素が本作には佇んでいる。

 

 

『I’M FLASH!』が、2013年のニューヨーク・アジア映画祭、そしてジャパン・カッツ!で上映を迎えるにあたり、豊田利晃氏がニューヨークを訪れた。COOLは彼にジャパン・ソサエティでインタビューを行った。

今回ニューヨークで上映される『I’M FLASH!』は「生と死」がテーマですが、それに強く興味を持たれるようになったのはいつですか?

2011年に震災がありましたよね。3/11の2週間後に藤原竜也から「飲もう」と電話が掛かって来て、焼き鳥屋で2人で飲んでたんですけど、彼が年内に僕と1本映画を撮ると勝手に宣言したんです。でも3/11の後に何を撮れば良いのかすごく迷いました。震災を題材にした作品を、3/11直後に撮るというのは、ドキュメンタリーでは可能かもしれないけれど、フィクションとして撮るのはとても品がないと僕は感じてしまったんです。でも、そこから逃れて物語を作ることは2011年には出来ませんでした。当時一番ショックだったのは、多くの人が死んだということでした。そして僕の周りでも、原田芳雄さん、僕の親友のDuneという雑誌の編集長、行きつけの草津温泉の鮨屋の大将が亡くなってしまいました。そこで、生と死をテーマに映画を作ることは、何か意味があるんじゃないか、多くの人が求める何かがあるんじゃないか、僕もこのタイミングでなければそれは描けないんじゃないか、と感じたんです。

 

生と死という2つの要素を藤原竜也さんと松田龍平さんが司っていますね。

僕の映画のキャラクターは、みんな死にたがってるんですよ。僕自身も「死んじゃいたい」って強く思うことがあるんです。でも同時に、「死んだら終わりだ」っていう気持ちもあるんです。今回、その相反する気持ちを藤原竜也と松田龍平に託したんですよ。もちろん、松田龍平の役は「死んだら終わりだぜ」っていう立場ですよ。その2つは今でも自分の中でずっと揺れているし。でも僕は、最終的に死んだら終わりだっていう方に進み続けたいっていう願いがあるんです。

 

今回、藤原竜也さんは豊田さんの作品に初参加で、松田龍平さんは3度目の参加ですね。

龍平は滅茶苦茶面白いので、未だに一緒に仕事しても飽きないんですよ。僕はやっぱりブランクがあったので、再び映画を作るときにまた仲間を集めたいなって思って、今回は大楠道代さんにも出て頂きました。だからもう一度始まるぞという気持ちは強くありましたね。

 

大楠さんすごかったですね。

彼女自身もビビってました。「えっ、1 カットで撮るの?台詞覚えられない。」って言ってたんですけど、現場に来たら全部覚えてましたね。素晴らしい方です。

 

音楽や音そのものにすごくご興味があられると思うんですけど、それらの興味はいつ頃から芽生えたんですか?

10代の頃だと思いますね。折角映画を作る機会があるなら、憧れのミュージシャンと仕事したいと思っているんです。BLANKEY JET CITYの中村達也は僕にとってのヒーローなので、今回は特に彼をメインに映画音楽を作ったんですよ。彼のドラムで始まって、ドラムで終わるっていう構成になっています。

 

ドラムの音で脳を刺激されるようでした。

中村さんは世界的ドラマーだと思います。レッド・ツェッペリンのジョン・ボーナムの日本版というか。ロックだけじゃなくジャズも何でも出来る。早く世界に出て欲しいですね。

 

豊田さんの作品のナレーションはあらすじを説明するのではなく、どこか詩のようで、映画の世界観を成す役割を果たしてると思います。豊田さんにとってナレーションとは?

最近ナレーションが多いって言われるんで、次の作品では実は避けたんですよ。でも僕の意識としては、音楽があって、歌詞があるみたいな感じなんですね。ジャック・ケルアックとかを聞いていると心地良かったりするので、あんな感じに出来ないかなと。『アンチェイン』っていうドキュメンタリーを撮ったときに、ドキュメンタリーの映像を繋ぐだけじゃなく、それ以上の表現手段が欲しいと思ったのでナレーションを入れ始めたんです。その影響で、『青い春』でもやってみたし、他の作品でもやったんです。歌詞みたいなものですね。

 

また、豊田さんの作品は仏教的だったり、思想的だったりすると思うのですが、そういうものに興味を持たれるようになった理由は?

インドにクリシュナムルティという思想家がいたんですけど、彼が15、16歳のときに星の教団の教祖になって、20代で辞めているんですよ。辞めたときに、やっぱり暗殺命令とか出て、カリフォルニアに逃げたんですね。それから彼はカリフォルニアのヒッピームーブメントに関わって行くんですけど。当時の若者たちとの質疑応答の資料がたくさん出ていて、彼の受け答えがものすごく面白いんですよ。彼にはとても影響を受けましたね。

 

豊田さんの映画の中に、孤独なキャラクターが多いと思うんですけど、物語を作る上で孤独にどういう意味がありますか?

孤独じゃない人っているんですか?それに尽きると思うんですよね。僕自身、孤独と向き合わないと脚本が書けないんですよ。これからもずっとそうなんじゃないかって思いますね。

 

豊田さんは、世の中の隙間に生きているような人たちにスポットライトを当てて、彼らを救うようなアプローチの物語を作られていますね。それは、ご自身のどういう気持ちから?

僕は9歳の頃から将棋の世界にいたので、学校はあまり行ってなかったんです。ほとんど中卒みたいなものなので、社会からは離れた世界で生きてきたんですね。そんな中で不良少年や犯罪者とかに出会って励まされたんですよね。良い出会いがたくさんあったので、僕が映画を作るときは、その人たちに向けて映画を作っているんです。人生うまくいかなくて困ってたり、憤りを持って悩んでるような人、それは僕自身でもあるので、自分に向けている部分もあるのかもしれないですね。やっぱり最高の観客は自分だと信じているので、そこに向かうしかないということでしょうね。

 

昨晩また『ナインソウルズ』を観てたんですけど、そのときに気付いたのは、「穴」があの作品を象徴してるんじゃないかってことだったんです。ただ開いている穴ではなく、先に抜け道があるトンネルみたいなもの。他の作品に関しても、突き破りたいという精神を強く感じるし、映画を通して何か突き破りたいっていう想いがあるのでしょうか?

それがあるからやっぱり映画を作ってるんでしょうね。お金儲けのために映画作っているわけではないので。お金のために、というんだったら、もっと簡単にいろんな映画を作ることが出来るんですけど。何かを打破したいとか、現状を変えたいという気持ちが映画を作るための原動力になってますね。『ナインソウルズ』みたいに、穴や逃げ道というのは僕の映画作りにおける1つのテーマですね。

 

『I’M FLASH!』には特に生と死というテーマが強く現れていますけど、豊田さんの他の作品にも少なからずそのテーマは反映してますよね。

人間にはやっぱりそういう衝動があると思うんですよ。人を、特にはぐれ者を描くときに、「年金もないしこの先どうやって生きていくんだ」みたいな状況で、今花火みたいに生きたいという気持ちがあるんじゃないかって。だからそこは避けて通れないと思いますね。次回作でもやはりそういうニュアンスは入っています。

 

text & portrait photos by 岡本太陽

still photos by 『I’M FLASH!』製作委員会


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