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Place: London

ペイパー・ドールズ

アートカテゴリ:  Performance

フィリピンからイスラエルに出稼ぎにやってきたドラッグ・クィーンにスポットライトを

当てた舞台がロンドンで話題を呼んでいる。あまりの人気に、期間を2週間延長して4月28日まで上演予定。紛争、宗教や差別、移民を取り締まる国家警察などの重たい現実問題を、ゲイ独特の明るさで包み、観客の笑いと涙を誘う。

 

© Tristram Kenton

 

「ペイパー・ドールズ」は、実話に基づくドキュメンタリー映画を舞台化したもので、会

場であるトライスクロン・シアターは、奇しくもその映画をロンドンで初上映した場所で

もある。午後2時から始まる昼の部には平均年齢60歳以上の観客が詰めかけ、ヘブライ

語、英語、タガログ語で軽快に交わされる音楽や冗談に肩を揺らせていた。

 

ニューヨーク、ブロードウェイで活躍する役者3人らが演じるドラッグ・クィーンたちは

、昼間はメイドとしてイスラエル人の「パパ」の身の回りの世話をみる一方、夜はスカー

トとハイヒール姿で舞台に立つ。フィリピンから到着したばかりの振付け師を新しい仲間として迎え入れ、テルアビブ1のクラブまで上り詰めるが、その間、グループ内での衝突、成功を入手するための妥協などの問題に直面。華やかな世界だけでなく、醜い現実があることに、観客は、彼らを追い続けるドキュメンタリー映像家のカメラを通して「体験」する仕掛けになっている。

 

テンポよく進むストーリーは、決して大きいとは言えないスペースを巧みに使ったステージで繰り広げられる。中央の回転台を反転させることで時間の転換を行い、長くのばして巻いたもみあげに、黒のスーツ姿のコーラス隊を節目、節目に登場させることで、舞台がイスラエルであることを観客にリマインドさせる。

 

© Tristram Kenton

 

5人のドラッグクィーンたちは、それぞれ性格や持ち味が異なり、その人間らしさもまた、観客を魅了させる要素となっている。38歳のサリーは一番のしっかり者で、どんな状況に置いても自分の信念を曲げず、友人を裏切ることはしない。7年間メイドとして面倒をみてきた「パパ」とは実の家族よりも強い絆を築き、2人の信頼関係は舞台にもう1つのダイメンションを与えている。

 

サリー(実名:サルバドル・カマトイ)は2007年11月、美容師として訪れたアラブ首長国連邦で死体として発見された。入国して20日目のことだった。開演前に劇場に招待された4人のペイパー・ドールたちは、今は亡き仲間の姿が生き生きと再現されているのを見て、涙が止まらなかったという。

 

この舞台は、彼女を始めとする世界中の「ペイパー・ドール」たちに捧げられている。

 

text by Mayuko Ono