Interview

 
 
Place: New York

豊田利晃、世界を愛してしまった映画監督

Toshiaki Toyoda
アートカテゴリ:  Film

日本で活躍しながらも、どことなく外から日本を見つめている印象を与える映画監督・豊田利晃。「青い春」「ナイン・ソウルズ」「空中庭園」といった彼の魂のカケラは、日本国内はもちろん、国外でも高い評価を受けた。第11回ニューヨーク・アジア映画祭/第6回ジャパン・カッツ!でプレミア上映された、ユナ・ボマーことセオドア・カジンスキーの犯行声明文(通称:ユナボマー・マニフェスト)に影響を受け生み出された新作「モンスターズ・クラブ」では、外から日本を見つめる彼の視線はより一層引き立ち、わたしたちの心を揺さぶる。何故彼の作品はこうもわたしたちの心を動かすのか。それは彼が、世界の存在に誰よりも感謝を捧げているからではないだろうか。COOLはそんな豊田監督にインタビューを行った。

 

”カジンスキーは反社会的なんですが、反社会的ということはこの世界が実は大好きなんですよ”

今まで豊田さんの作品では迷える人々が再生する姿を描かれてこられましたが、今回の「モンスターズ・クラブ」でも、産業社会自体は変わらないけれども、主人公が新しい人生のステージに到達するさまを描かれています。「再生」は一番ご興味のあられるテーマなのですか?そうなってますよね。変革するということに興味があるんですけど、でもそれをもっと個人的なレベルにすると再生ということになるんでしょうね。

それはご自身も変わりたいという気持ちから?そうですね。今の自分より、より良くなりたいというのはいつも思ってますね。子供の頃将棋をやっていましたが、それを挫折して、そこから新しく人生を踏み出す必要があったり、2005年の事件があって映画界から追放されたけれども、再びまた浮上し、そういう意味でも「再生」はテーマになっているかもしれないですね。

「モンスターズ・クラブ」は、ユナ・ボマーことセオドア・カジンスキーの犯行声明文にインスパイアされて作られたそうですね。彼の犯行声明文を読んだとき、今の日本を反映しているかのようだな、と思ったんですよ。彼はアメリカ人ですが、アメリカのことではなくて、これは日本のことなんじゃないかって思うくらい。カジンスキーは反社会的なんですが、反社会的ということはこの世界が実は大好きなんですよ。社会のことが本当に嫌いであれば、非社会だと思うんです。彼はある種幼稚でもあると思うんですが、でも気持ちは分かりますね。

 

映画の中に出て来る山小屋は、ただの山小屋ではなく、他人が簡単に入っていけない意識の空間のようでしたね。 まずユナ・ボマーの犯行声明文と、山小屋に1人で住んでる男が、電気も水道もなく、サバイバルすることに興味があったんですよ。鹿を殺したり、野菜を育てたりしながら、山小屋で暮らしてるような。映画の中の山小屋はユナ・ボマーが住んでた山小屋のデザインにしています。サザエさんの家みたいな、普通美術で作ったらありえないような分かり易い小屋なんですが。ディテールに関しては僕と美術で一緒に、電気も水道もなくてどうやって生活してるんだ、とああだこうだ言いながら作りました。セットは実際に東北の山の中に作ったので、毎日30分くらいかけて行き、氷点下10何度のところで撮影してました。

”それはやっぱり3/11があったから。でも「モンスターズ・クラブ」を作ったのは、実は3/11前なんですよ。2月末の東北だったんで、本当に直前だったんです”

良一のモノローグの中に1年に3万3千人が自殺している、とありますが、それは日本のことですよね?そうです、日本のことです。

そう思って、日本ってやっぱり生きにくいのかなと。日本人って、自分よりも先に社会人でなくてはいけないし、自分の気持ちよりも先に社会のことをまず考えて生きなくてはいけないですよね。ニューヨーク来るとホっとしますもんね。こんな街中なのに凄く開放的だし。最高ですよね。僕は東京の外れに住んでますが、あまり東京では仕事をせず、温泉地で仕事してます。

人の考えることとか意識ってどこかで繋がっているのかな、と思わされるんです。最近観たアメリカ映画も「金持ちにコントロールされるな」的な、社会構造の改革を訴えるような映画でしたし、「ダークナイト」の新作もディケンズの「二都物語」にインスパイアされた作品ですし、日本の映画界ではそういった波みたいなものは来ていますか?いや今のところ僕1人だと思いますね。でもこれからそういうのは始まって行くんだと思うけど。それはやっぱり3/11があったから。でも「モンスターズ・クラブ」を作ったのは、実は3/11前なんですよ。2月末の東北だったんで、本当に直前だったんです。「モンスターズ・クラブ」が日本の若者に受けた理由は、やっぱり3/11の影響もあったと思いますね。

豊田さんの沈黙期間のこと伺ってもよろしいですか?というのもあれあっての「蘇りの血」であり、「モンスターズ・クラブ」だと思うんです。あの沈黙期間に思い描いていらっしゃったことってどういうことだったんでしょうか?僕結構前向きなんですよ。なのでもう次の映画のこと考えてましたね。東京は引き払って、岡山で木材工場やっていた友人のところに行き、そこで部屋を借りて住んで、ボクサーの友達も近所にいてジムも貸してくれて、体鍛えたりしてました。また近くに混浴の露天の温泉があったりして、働きもせずずっとそこにいました。僕は音楽シーンの人たちに可愛がられてきたんですけど、僕が映像を担当し、Blankey Jet Cityのメンバーである中村達也と照井利幸、ROVOというバンドのエレクトリック・バイオリンを弾く勝井祐二と、一緒にツアーを回ったり、いろんなロックフェスに出てたんですよ。だから結構実は忙しくしていたんです。それから2年経ったくらいから山奥で宮本武蔵を撮ろうとしていて、それがクランクイン直前まで行ってたんですけど、流れちゃって。始めの半年から1年くらいはじっとしてましたが、それ以降は結構忙しくしてましたね。

”笑いと涙はいつもくっついてて、エロと恐怖はくっついてる。だから出来るだけ笑いは取ろうとしてますね”

豊田さんは傷ついた人やアウトサイダーが好きなんだと思うんですが、豊田さんにとっての映画の中のヒーローっていますか?
難しいなぁ。でも「風の谷のナウシカ」のナウシカ好きです。メーヴェ乗ってみたいですね。でもあれは凄い話ですよ。映画版よりもむしろ漫画版の方がもの凄いと思います。

豊田さんの映画ってダークなところに、思いもしない超ライトなシーンが入ってきて、それがちょっと小津的でもあり、絶妙だと思うんですが、そういったセンスはどうやって培われたと思われますか?分からないですけど、大阪出身の関西人なので、笑いは基本的に入りますよね。誰と会話してても。だからそれは理由の1つにあるんだと思いますが、やっぱり一回笑わせないと泣きに行けないんですよ。笑いと涙っていつもくっついてて、エロと恐怖はくっついてる。だから出来るだけ笑いは取ろうとしてますね。

”僕は何かを抱えているような、背景が見える人が好きですね。会った瞬間にそういう奴って分かりますし、顔にも出ますよね。そういう奴と一緒にものを作るのが好きですね”

今の日本の若者って、豊田さんにはどう映ってますか?僕は今43歳なんですが、まず、僕らよりも今の10代や20代は数が少ないですね。数が少ないから単館系の映画館が潰れていってるとか、ライブハウスに客が入らないとかはそのせいだと思うんですよね。しかもみんな金を使わないから、テレビを観ますよね。そうするとテレビ映画に客が入ります。とても子供っぽい子たちが多い気がします。それにすごく良い子たちばかりなので、「なんでそんなに良い子なの?」って思いますね。でもそんな中で尖ってる子もいますけど。

では、豊田さんが好きなパーソナリティは?僕は何かを抱えているような、というか背景が見える人が好きですね。会った瞬間に人って、これまで何をしてきたかが分かりますし、顔にも出ますよね。そういう奴と一緒にものを作るのが好きですね。別に芝居がどうのとかじゃなくて。今回もRizeのベーシストのKenKenと仕事をして面白かったし、役者だけやってる人と飲みに行っても会話が続かなくて、「そんな演技論とかどうでも良いよ」って。

ウォール街を占拠せよの他にも、今ニューヨークに、スーパーの外に捨てられた手つかずの食品を見つけたりして、お金をなるべく使わずに暮らしている若者がいたりするんですよ。日本ってそういうことをやってる人っているんでしょうか。ムーブメントとしては首相官邸前で毎週金曜20万人とか集まってますよね。僕はどちらかというと、暴動を起こしたい派なんですけど、彼らは非暴力に徹してます。「つまんねぇな」って思いますけど。でもアメリカの圧力は凄いから絶対原発は再稼働するし、難しいなって思いますね。僕はやっぱり表現者として何かやりたいから、福島行ったりしてますが、今そういったムーブメントは世界で起こってますよね。ただ日本人は贅沢を一度経験しているから、そこから生活レベルを落とすのは相当難しいでしょう。実際に原発の問題でもみんなが生活水準を落とせば、電気をあまり使わなくて済むんですが、日本人には出来ないでしょう。僕は元々生活水準低いから全然大丈夫だけど。日本の中産階級の人たちがクーラー使うなって言われても絶対使いますよ。

 

 

text by 岡本太陽

 

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