Interview

 
 
Place: New York

長澤まさみ、女優としての飛躍

Masami Nagasawa
アートカテゴリ:  Film

12歳から芸能界で活動し、今や東宝の看板女優の長澤まさみ。代表作は「世界の中心で愛をさけぶ」や「涙そうそう」など数知れず。これまで真っ直ぐで、はつらつとした女の子を演じ、日本映画界で清純派女優という特等席を獲得した彼女。しかし昨年日本公開された久保ミツロウ原作、大根仁監督作の「モテキ」で、ついに彼女はそのイメージにとらわれない役を試み、女優として一皮剥けた演技を見せつけた。

 

「モテキ」で彼女が演じたのは、森山未来扮する主人公を翻弄する松尾みゆき。みゆきは、思わずドキッとしてしまうようなシーンもある男にだらし無い女性で、長澤が演じてきた隙のない役とは随分違う。しかし演じることが好きな役者であれば、様々な役に挑戦したいというのは、特別なことではなく、むしろ自然。女優の道はおそらく歩いていく途中で分かれ道があるのではなく、それは常に一本道で、その上にきっとタイプの違う役が待っているに違いない。これから女優・長澤まさみの更なる変化が楽しみだ。

COOLでは、今年で第11回目を迎えるニューヨーク・アジア映画祭/第6回ジャパン・カッツ!でプレミア上映された「モテキ」のため、ニューヨークを訪れた長澤まさみにインタビューを行った。

長澤さん演じる松尾みゆきははサブカルチャーに影響を受けたキャラクターですが、役を演じるために研究されたことは?サブカルチャーと言っても、「モテキ」の中で描かれているものは、音楽の場合だと今の30代の方々が青春時代に聴いていた曲が多く、世代が違い知らないことも多かったですけど、名曲って次の世代に受け継がれるものだと思うので、聴いたことある曲もいくつかありました。特にサブカルチャーについて調べるということはしませんでしたが、なるべくその世界に入って行く努力はしました。

原作を執筆された久保ミツロウさんとお会いされたときの印象は?撮影中に初めて会ったんですけど、彼女が描いている女性たちは、結構出来る女たちなので、スマートな女性を想像していたんですが、優しい目をしたとてもほんわかした人でした。でもとても意志が強くて、自分の好きなものや興味があるものには、もの凄く想いをぶつけて来る女性なんです。

森山未来さんとは「世界の中心で愛をさけぶ」で共演されてから、かなりの年月が流れていますね。前回良い作品が作れたので、また一緒にお仕事したいな、となんとなく期待していたんですが、そしたら8年振りにお仕事する機会がやって来たんです。昔は全然話せなかったのに、お互い社交的になって現場で話せるようになっていました。でも彼もわたしも現場に入るとお芝居に没頭するタイプなので、集中出来てとてもやりやすかったです。何をしても受け止めて返してくれて、未来君と仕事をするとちゃんと自分の存在が自分で感じられます。

「モテキ」では清純派のイメージから脱するかのような、結構大胆な演出がありましたね。女優をやる上で自分に清純派というイメージがあることは気付いていましたが、改めて自分の存在がそういうものだったんだ、ということが「モテキ」をやった後により一層感じました。わたしは楽しそうだなと思ったら行動に移すような、好奇心旺盛なタイプで、常に違うものは求めているので、みゆきに関して、踏ん切りを付けて「この役に挑もう!」と思ってやったわけではないんですよね。でも周りがそういうものを求めていたんだなというのは感じました、大胆なわたしを期待してくれてる人がいたんだな、と。

大根監督だからこそ引き出してくれた要素とは?大根さんは愛情深い方で、本当にわたしたち俳優を愛してくれるような演出をされ、何をやっても褒めてくれる環境でした。それが自分のやる気や、「もっとこういう風にやってみたいな」というような思いに繋がっていったと思います。基本的には自由にお芝居をさせていただいていたので、そんな環境の中だからこそ今までとは違う自分が出たのかな、と思いました。

長澤さんがおっしゃった「自信がない」という言葉を大根さんが拾って、みゆきを作ったそうですね。みゆきにリアリティを持たせたいということで、大根さんが脚本作りをしている途中に会い、自分のことを話している途中に、「わたしは自分に自信がありません」とお話ししたら、それをみゆきに反映してくれました。当初のキャラクター設定では、ただのビッチな女の子だったんですけど、わたし自身の要素を取り入れることで、役に深みが出てたと思います。

映画の中ではいろんなタイプの女性が出て来ますが、長澤さん自身はどのキャラクターに一番近いですか?そうですね。自分のことって自分が一番分からなかったりするじゃないですか。なのでどれなんだろうって感じなんですが。大根さんは、「モテキ」に出て来る女の子4人は、1人の人間が持ち合わせている側面だ、って言ってたので、結局どのキャラクターにも当てはまっちゃうんですよね。例えば素子(真木よう子)は怒る中にも母性が感じられる、愛(仲里依紗)は現実主義で今をしっかり見ていて、るみ子(麻生久美子)は恋に恋をしちゃう、みゆきに関しては女の武器を使う子というか、全部に当てはまると思うので、どのタイプにもなれるのかなって思います。

幸世が主人公の物語でありながら、るみ子が救われることで、映画自体も救われるような印象を受けました。やっぱり相手が幸世だったからこそ、るみ子が重く映ったと思うんですが、彼女を良く知るみゆきにとってのるみ子の存在とは?きっとライバルなんだと思いますね。みゆきの持ってない部分を全部持ってる人だから。女同士ってそういうのあると思います。でも時には良い影響を与え合ってお互いのやる気に繋がっていくというか、切磋琢磨出来るというか。男性はどちらかと言えばみんなで力を合わせて頑張ろうみたいになるけど、女性って誰かの一番になりたいと思うんです。だから女として生きて行く上で女同士はライバルなんだと思います、恋愛だけじゃなく、働いていく上でも。

アメリカの観客にこの作品から感じて欲しいことは?これはお祭り映画なので、メッセージは特にないんだと思います、「みんな良い恋しろよ」みたいな。幸世に過去や今の自分を重ねて共感している人って結構多いと思うんですけど、でも何に一番共感しているかって、幸世というキャラクターじゃなくて恋をしていることだと思うんです。「そういう恋をしたいんだ俺も、わたしも」ってことで共感を得ると思ったんですよね。恋愛のお手本にはならない映画ですけど、恋するテンションを上げたいときに観る映画かなと。また、自分の良さや自分の中の恋したい気持ちに気付くような映画だと思います。

長澤さんは12歳からずっと芸能界でお仕事をされてますが、10代のときや20代前半は自分探しの時期で、いろいろ悩むこともあったかと思います。もしそういう時期の自分に会えるとしたら、どういう言葉を掛けてあげたいですか?「悩め」って言いたいですね。悩まないと分からないことたくさんありました。わたしはわりとネガティブな考え方をしてしまうタイプなので、結構疲れるんですけど、逆にそれがないと自分じゃないんですよね。そこからどう違う方向に持って行くかは自分次第だし、ポジティブばかりが良いわけじゃないと思っているから、悩むことも良いことに繋がると信じています。悩むと答えを探そうとしますよね。でも答えはそのうち出て来るんですよ。

 

text by 岡本太陽

 

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