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Place: New York

「 私は誰?:シンディ・シャーマン」

アートカテゴリ:  Photo

MoMAで好評開催中の「シンディ・シャーマン展(Cindy Sherman)」では、セルフポートレート写真家の第一人者でもある彼女の初期の作品から最新作までを網羅。デビューから30年以上経った今、改めてシンディ・シャーマンの魅力を十分に堪能できる回顧展となっている。

 

アメリカには多くの有名女性写真家がいるが、シンディ・シャーマンほど、「女性であること」を意識している人はいないだろう。自らを被写体とし、「Untitled Film Stills」をはじめ数々のポートレート作品シリーズを発表。大抵の写真家なら被写体を変えて新シリーズを作ることが多いが、彼女は頑固としてセルフポートレート写真家としてのスタイルを固持し続けている。

 

しかし、セルフポートレートと言いながら、自分本来の素顔を収めていない彼女の作品の数々。中でも、異色の一つ「セックス・ピクチャー」シリーズは見逃せない。女性であるがゆえに求められる作品へのセクシュアリティを、自分自身のヌードではなく、マネキン人形や人体模型を使って、お笑いコントのごとく写真表現した。もちろん、作品の一部として自分の体の一部も作品に取り入れている。滑稽ながらもセンチメンタルな女心が垣間見え、女の性を描いた傑作シリーズだ。そしてシンディの最新作シリーズは、彼女が老いを否定せずに老いを楽しむ余裕さえうかがえる。きっと、現在の彼女の恋人でもあるデヴィッド・バーンの存在が功を奏しているのだろう。

 

現代アートの道化師、シンディ・シャーマン。作品の中に自分の本性を見せず、時代と共に生きる彼女のオルター・エゴ達で見るものを虜にする。キャラクター設定はあるが名前のない架空の人物達。そして写真撮影だけではなく、モデル、ヘアメイク・アーティスト、スタイリスト等、自分の作品の制作過程で何役も自分でこなすスタンスは今も変わらない。

 

ところで、ニューヨークで毎年開催されるトライベッカ映画祭(Tribeca Film Festival)。今年のコンペ部門受賞者には、トロフィーの代わりにシンディ・シャーマンが寄付した作品がなんと授与されるらしい。彼女の作品「Untitled #96」が、クリスティーズ・ニューヨークのオークションで、約3億1740万円($3,890,500)で落札されたのが去年の話。誰もが羨むトロフィー代わりになるに違いない。

 

 

text & by Miki Ikeda Fuller