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Place: New York

David Lynch @ Tilton Gallery

アートカテゴリ:  Painting, Film, Multi Media, Movie

マンハッタンのアッパーイーストにあるTilton Gallery(ティルトン・ギャラリー)で、「デビット・リンチ展」が開催された。この小さなギャラリーで行なわれた個展は、2フロアで展示数もそれほど多くはない。しかしながら、デビット・リンチの今を知る上で、この個展が大事な鍵のひとつになることは間違いない。

 

 

美大生として絵画を勉強しながら、映像を作り始めたリンチ。この個展では、今年で66歳になった彼の新作のミックスメディアのペインティング、写真、ライトスタンド、映像等が展示された。「 No Santa Claus 2011」と題した作品は、赤いミニ電球7個をキャンバス内に埋め込んだ2メートル四方の大作。崖の中央に奇妙な赤い怪人が立ち、サンタなんかいらないと言わんばかりに、サンタクロースは空遠くに飛ばされてしまっている。大作ながらも右上後方に小さく見えるサンタの細かい所まで丁寧に表現され、まるでリンチの小さい頃の思い出を紐解いたような作品だ。また、リンチ独特の手書き文字がある作品には、何か作品の隠れた暗号を解く糸口があるのではないかとも錯覚してしまうようで、思わず見入ってしまう。ちなみに、リンチは大好きな画家のひとりにシュルレアリスムを代表するベルギーの作家、ルネ・マグリットを挙げている。

 

©David Lynch “No Santa Claus 2011″  mixed media, 82 x 82 in.

 

やはり映画監督としての顔がよく知られているデビット・リンチだが、2006年の映画「インランド・エンパイア」を最後に長編映画の制作をしていない。それから既に6年。もう引退したのではと憶測さえ飛び交う中、リンチは原点の画家、声優、そして音楽活動等、自由気ままに創作活動を続けているようだ。

 

彼の作品は、年を重ねる毎に成熟するワインに似ている。リンチという輪郭はあるのだけど、その周りだけ残して、彼の作品は成熟していく。彼のアートの世界は、映画(映像)はもとより、文学、写真、ミックスメディア、音楽、演技など幅広い。だから、いつもデビット・リンチが映画監督と一言で表現されてしまうことが、もったいない気がしてならない。

 

 

 

text & photo by Miki Ikeda Fuller