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Place: New York

Valentin Carron: The dirty cube (you) turns around sadly and screams at us (he), 〝ca-ta-rac-ta”

アートカテゴリ:  Painting, Sculpture, Installation

チェルシーの303Galleryにて、4月6日から5月12日まで、Valentin Carronの「The dirty cube (you) turns around sadly and screams at us (he), 〝ca-ta-rac-ta”」展が開催中だ。この展示はCarronにとって2009年以来、303Galleryで二度目の展示となる。

 

303Galleryというネーミングは、Lisa Spellmanとその友人らによって、84年に303 Park Avenue Southのロフトを借りてギャラリーがスタートしたことに由来する。以降、幾度かの移転を繰り返し、96年に現在の場所に落ち着いた。小規模ながらも、Stephen ShoreやNick Maussなど国内外の多くのアーティストの企画をおこなう、チェルシーでも注目株のギャラリーのひとつである。

 

 

やや難解に見える今回の展示だが、初めにValentin Carronというアーティストを知ることで、作品をより深く理解することができるだろう。Carronは77年生まれの、ジュネーブに活動の拠点を置くスイス人アーティストである。彼の作品は既存のパブリックアートや記念碑など、権力の象徴であったり、人々に多大な影響力を持つ作品を、全く違ったプロセス・意味性を用いてつくり変えることによって、そのアートが本来持っている本質を変えていく、というものである。今回の展示でも、彼のオリジナルの視点からつくり変えられた作品をみることができる。展示は主に「立方体」、「窓」、「蛇」という三つの要素から構成されている。

 

特に目を引くのは5フィート角の立方体作品「Grey Dirty cube(2012)」である。この作品は、一見本物の大理岩でつくられている様に見えるが、実はポリスチレン(発砲スチロール)製の偽物である。Carronは、Edwerdt Hilgemannの彫刻を模してこの彫刻を制作しているが、大理石を模倣するという手法を取ることで本物の彫刻のまがいものをつくり、作品にキッチュな印象を与えている。

 

 

また、「窓」のシリーズからも同じ印象を受ける。この作品は「window paintings」と名付けられており、「ダル・ド・ヴェール」という、ステンドグラスをつくる際の技法を使い、既存のステンドグラスや建築物のファサードをキャンバスに構成し直したものである。この作品は、光の恩恵を受けない純粋なマテリアルとしてのガラスをみせることで、物体を組み込んだペインティング、つまり純粋なペイントでも物体でも無い曖昧で両義的な概念を作品にしたものである。言い換えれば、Carronの作品はレディメイドであるともいえるであろう。

 

Valentin Carronは新たなオカルト的神話を創出するアーティストと言っても過言ではない。アートの新しい可能性を追う一人のアーティストの動向を今後も注目したい。

 

text & photo by Yoshiko Murakami